ICレコーダーの音声が浮気の証拠として裁判で役に立つかどうかは、録音された音声の内容と、録音された状況によります。
音声の内容による証拠能力の有無
ICレコーダーで録音された内容は、それ単体では強い証拠能力を持つとは言い切れません。
しかし証拠能力がないわけではなく、他の浮気の証拠を補強するためには、十分に役立つものです。
例えば、以下のような内容の
録音データは証拠として採用される場合も多いです。
- 夫婦での会話で、浮気、不貞があることを認めた内容の録音
- 不倫相手との会話で、特に肉体関係があることを伺わせるもの
- 性行為やその類似行為を行っているとはっきりわかる現場の録音
ただし、これらの内容の録音は、「そのときはカッとなって嘘をついた」「そういう関係になれたら、という妄想の会話だ」という主張を、裁判で行われる可能性が否定しきれません。
また、ICレコーダーで取得できる音声はデジタルデータですから、ねつ造されたものだ、と主張されることもあります。
そのような主張をされる場合、先にも述べましたが、他の決定的な証拠を強めるものとして使用しましょう。
たとえば、浮気現場と思しき浮気相手の家に入っていく写真を手に入れたとします。
この証拠に対して、「招かれて食事をしただけ」と主張されたとしても、証拠音声として肉体関係を匂わせる会話の録音があったなら、裁判官に相手方の主張を疑わせる十分な力を持つでしょう。
音声が録音された状況による証拠能力の有無
ここまでICレコーダーの音声の内容について触れてきましたが、次に音声が録音された状況による証拠能力への影響をご説明します。
端的に言うと、
違法に収集された音声は、証拠として認められないことがあります。
ICレコーダーの設置のために不倫相手の住居に侵入したり、配偶者の勤め先に侵入すれば、住居侵入(刑法130条)の罪に問われます。
このような方法で配偶者と浮気相手の会話が録音できたとしても、裁判の場に提示することはできません。
しかし、上記のように明確な違法行為はともかく、不貞行為の証拠を集めるための行為が不法行為にあたるものであっても、収集した証拠が即座に却下されることはありません。
夫婦の共有財産である自動車にICレコーダーを設置して、配偶者と浮気相手の会話が録音出来たとします。
このようにICレコーダーで他者の音声をこっそり録音してその秘密を知ることは、プライバシー権の侵害など民法上の不法行為にあたる可能性があります。
しかしそのように取得された音声でも、反社会性が薄いとして裁判の折に証拠として採用された判例が存在します。
どの程度まで証拠として問題がないかは、過去の判例との照合して判断する必要があります。この精査は、弁護士に任せるほうが良いでしょう。
重要な証言は書面に起こそう
裁判に音声の証拠を提出するときは、
その内容を文面に起こしたもの(反訳書)を添えて提出する必要があります。
裁判官は音声そのものを聞くことはほとんどありません。
重要な証言が取れたと思った時は、その内容を省略、編集せずに文字に起こしましょう。
できれば、弁護士に依頼する前にその作業が終わっていると、依頼がスムーズに進みます。