最近夫の帰りが遅く、浮気ではないか心配しています。通勤に使用している自動車にGPSを仕掛けて、ちゃんとまっすぐ帰宅しているか確認したいのですが、違法になるのでしょうか。
浮気・素行調査目的などで、GPS発信機を仕掛けること自体に違法性はありません。しかしGPSを仕掛ける過程で、また仕掛けた結果によっては違法性を問われるケースがあります。
これだけでは分かりにくいと思いますので、詳しく解説していきます。
自動車への設置を前提に話しますが、バイクや他の所持品でも考え方は同じです。
まず違法になるおそれがあるのは、車の名義が夫婦どちらでもない、たとえば浮気相手の車だったり、夫が勤める会社名義だったりした場合です。
夫婦どちらかでも名義に入っていれば車は「共有財産」とみなされセーフなのですが、他人名義の車にはGPSを仕掛けると損害賠償を請求される可能性があるということです。
別居中の夫婦でも車は共有財産と認められますが、完全にセーフとは言えません。過去に、別居している夫婦間でのGPS設置が【ストーカー規制法】違反で有罪になった判例があるからです。
さらに別居中や勤務先の車では、こっそり私有地へ入り込まないとGPSを仕掛けられない状況も出てくるでしょう。ここで強引に忍び込むと【住居侵入罪(不法侵入)】に問われる場合があります。
この両方を満たさない限り、なんらかの法律違反になってしまうと考えれば良いでしょう。
ただ、これをクリアしたからといってGPS発信機を仕掛けるのが絶対に合法だとも言えません。
たとえばGPSをバレにくいところへ隠そうと、車の外装や内装を意図的に引っぺがしたりした場合は、夫婦間であっても【器物損壊罪】が成り立つことがあります。
個人のプライバシーに厳しくなった現在では、別の法的リスクも忘れてはなりません。浮気調査のため夫の行動をGPSで監視した妻が、【プライバシーの侵害】として夫から逆提訴された一件などが代表例です。
また、各都道府県には【迷惑禁止条例】が存在しています。GPSを仕掛けて追跡するのがこれに引っかかると判断されれば、最悪逮捕・起訴もあり得ます。
このようにGPS発信機を使った夫の行動監視には、さまざまな思いもよらない違法性が潜んでいます。
最近は「自宅にいながら簡単に浮気調査ができる!」とGPSレンタルサービスを行っている業者もありますが、法に触れてしまうリスク、GPS情報だけでは浮気調査の決定打にならないという証拠能力の乏しさを考えれば、積極的にはおすすめできません。
きちんと浮気調査がしたいなら、GPS発信機に頼らず証拠を取ってくれる探偵や、今後の方針を示してくれる弁護士に依頼するのも一つの選択肢でしょう。