当社の社員が逮捕されました。逮捕の噂が広まると会社の評判が下がってしまうので、伝わってしまう前に解雇したいと考えているのですが、不当解雇に当たるのでしょうか?
逮捕された社員を解雇できるかどうかとのことですが、社員が逮捕されてもすぐに処分を決めるのは控えた方が良いとされています。
逮捕された、という第一報の段階では、有罪か無罪かは確定していません。
原則として、有罪が確定していない人は無罪として扱うことが求められます。
その原則に則り、有罪判決を既に受けた場合や本人が罪を認めている場合など犯罪の事実が確実になってから、社員への処分は考えた方が無難でしょう。
会社の就業規則に、「社員が犯罪行為をした場合には解雇処分とする」といった規定があったとしても、場合によっては懲戒解雇が無効とされるかもしれません。
ちなみに、会社の外で行われた社員の犯罪行為と懲戒処分については、国鉄中国支社事件(1974年2月28日第一小法廷判決)で述べられています。
そこでは、企業秩序に直接の関連を有する場合や企業の社会的評価の低下につながるおそれが客観的に認められる場合には、会社外で行われた行為であっても懲戒処分の対象とすることが許される可能性があるとされました。
しかし、その後の関西電力事件(1983年9月8日第一小法廷判決)で、前述の国鉄中国支社事件のようなケースに当てはまらなければ、会社の外で行われた業務に関係のない行為は、懲戒処分の対象になり得ない、と示されたこともポイントです。
つまり、すべてのケースで社員の行為によって懲戒処分が認められるわけではありません。
社員がどのような行為を行ったのかを確認し、懲戒処分の対象とできるかどうかを見極めることが必要となります。
懲戒処分による解雇が有効となるのは、当該社員の行為が会社の社会的評価に悪影響を及ぼす度合いが相当重大であると客観的に評価される場合です。
たとえば、東京地裁2014年8月12日決定では、東京メトロの社員が東京メトロの電車内で痴漢をして現行犯逮捕されたことは、会社外のことだとしても企業の活動に直接関連すると認められました。
一方で、職場内で犯罪行為が行われた場合、懲戒処分が認められる可能性は高いです。
職場内の犯罪行為にはたとえば、横領や窃盗、傷害などがあります。
しかし、すべての懲戒処分が認められるというわけではなく、安易に処分を決定してしまうとトラブルになりかねないので気をつけなければなりません。
特に、懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も重い処分なので、焦らずに慎重に判断するのが良いでしょう。
以上、逮捕された社員を解雇できるかどうかについて解説しました。
懲戒処分が認められるケースは限られているので、慌てて判断せずに慎重に考えてください。
もしもまだ疑問や心配が残るようでしたら、適切な専門機関に相談することをおすすめします。