失踪して連絡の取れない社員を解雇することはできますか?

1ヶ月ほど前から無断欠勤の上、一向に連絡の取れない社員がいます。やむを得ず解雇を考えていますが、一方的に解雇すると問題があるのでしょうか?


失踪により長期間にわたって無断欠勤が続いているならば、基本的には解雇することができます。ただし、解雇までに必要な手続きや、解雇の種類によっては厳しい制限もあるため、注意が必要です。

社員が失踪して連絡が取れないとのことですが、失踪して長期間にわたって会社の業務を行わないことは、普通解雇の正当な理由になります。


なぜなら、社員としての労働義務の不履行であるためです。

ただし、解雇をするためには、原則として失踪している当該社員に解雇する旨を通知する必要があります。


また、会社の就業規則に懲戒解雇について定めていることかと思いますが、内容を確認してみてください。
懲戒解雇の理由として、「長期間にわたる無断欠勤」が定められているなら、懲戒解雇ができるかもしれません。


ただし、一般的に懲戒解雇はハードルが高く、すべてのケースで認められているというわけではないので注意が必要です。


解雇権濫用法理という考え方によって、解雇は厳しく制限されています。
解雇権濫用法理では、客観的に合理的な理由のない、社会通念上相当であると認められない解雇は無効となるのです。


解雇する旨を通知するために当該社員と連絡しなければならないのに、どうしても連絡が取れないなら、公示送達を行うことで解雇の意思を本人に通知したことにできます。
公示送達について定めている条文は、民法第98条です。


民法第98条には、公示による意思表示について定められており、1項には、「意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる」、2項には、「前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。

第九十八条 公示による意思表示(e-Gov法令検索)

ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる」とあります。


したがって、裁判所で公示送達の手続きを行い、当該社員に意思表示をしましょう。


ちなみに、就業規則に「長期間の無断欠勤の場合は当然退職とする」旨の規定があれば、公示送達を行わずに、退職扱いにできます。
解雇ではなく退職となる点には注意が必要ですが、公示送達の手続きの手間を省略できるので、まずは就業規則を確認するのが良いです。


以上、失踪して連絡が取れない社員を解雇や退職とする方法について解説しました。


日本では解雇権濫用法理によって、社員の解雇については厳しく判断されています。


ですので、もしも疑問や不安が残るようなら、適切な専門機関に相談することをおすすめします。


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