検察官から略式起訴されました。裁判をせず罰金を支払いましたが、これは前科になるのでしょうか?
前科とは「何らかの刑罰を受けた経歴」のことを意味します。一般的なイメージとしては、懲役や禁固などの刑罰を受けたケースを想像するかもしれません。
ですが、懲役や禁固だけでなく何らかの刑罰を受けた経歴があれば前科になります。
罰金刑も立派な刑罰なので、裁判所から略式手続で「罰金もしくは科料」の有罪判決を受けて払った場合は前科になるのです。
ご質問に対してばっさりお答えしてしまうと、略式起訴でも罰金を払えば前科がつく、という結論になります。
犯罪行為が有罪である、と申し渡される場合、裁判をして判決がくだされることが基本です。 しかし、事件が多いと裁判所がパンクしてしまいます。
正式な裁判をせず、罰金刑にすることで刑事事件を終了させる。
これが略式起訴になります。
略式起訴で終了しやすい事件は、万引きや痴漢、暴行、交通事故などです。
まず、該当する罪に対して罰金刑が定められていることが大前提になります。
罰金刑が定められているケースで、検察官が「略式起訴で終わらせていいだろう」と判断した場合は略式起訴になりやすい傾向にあります。
対して、初犯ではないなどの事情がある場合や、罰金刑が見込まれる事件でも事情が複雑で判断に困る、というような場合は、略式起訴ではなく、きちんと裁判をして判決が下される可能性が高くなるのです。
なお、罰金や科料が定められていない罪での略式起訴はあり得ません。
例えば詐欺罪や恐喝罪などの重く見られる犯罪では、罰金刑が定められていませんので、略式起訴で処理されることはないのです。
略式起訴になるかどうかは最終的に「初犯か」「罰金や科料が認められているか」「検察が略式起訴でいいと判断するか」「被疑者に異議がないか(自分はやっていない、犯人ではないなどの主張がないか)」「事件の複雑さ」によって、ケースバイケースで決められます。
略式起訴では正式な裁判を行いません。
しかし罰金という罰を受けるわけですから、略式起訴での罰金も前科に該当するのです。
先に少し触れましたが、略式起訴は、「被疑者が事前にその刑罰を受け入れる」ことも成立の条件に含みます。
つまり、略式起訴で罰金が決まり、その罰金を支払ったということは罰を受け入れたということです。
もし前科がつくことを避けたい場合は、略式起訴に同意する前に対処する必要があるでしょう。
具体的には、被害者側と示談交渉をするなどの対処を行うことです。
示談などによる当事者間で決着がついていると、不起訴になる可能性が高くなります。
不起訴とは「起訴されていない」ということですから、前科はつかないのです。
示談交渉は、被害者の感情などが寄与するところも大きく、たやすく決着するものではありません。 早めに弁護士に相談し、適切に対処しましょう。