友人が昔軽いケンカ沙汰を起こして、略式起訴されたことがあります。
その友人と今度、海外旅行に行きたいと思っているのですが、略式起訴された経験がある人は海外に行けないのでしょうか?
略式起訴とは、通常行われる起訴の手続きを簡略化したやり方を意味します。
簡略化された手続きで処分を終わらせるのは、軽い犯罪を素早く処理するためです。
略式起訴が行える条件は、
の3つとなります。
略式起訴については刑事訴訟法第461条から第470条に詳しく定められています。
まず略式起訴を管轄できる裁判所と、罰金、科料の範囲の根拠を見てみましょう。
刑事訴訟法第461条で、「簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる。
この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる」ことが決められています。
ここに、対象となる事件は、簡易裁判所管轄のものであること、100万円以下の罰金、科料の事件であることが明示されていますね。
また、刑訴法第461条2は、「検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確めなければならない」という規定です。
被疑者が略式手続について理解し、異議がない場合にのみ略式起訴を行えます。
では、どのように罰金刑が言い渡されるのでしょうか。
刑事訴訟法第462条には、「略式命令の請求は、公訴の提起と同時に、書面でこれをしなければならない」と定められています。
検察官は、簡易裁判所に略式起訴を行うと同時に、「略式命令」を請求します。
簡易裁判所によって書面による刑事手続きが行われ(略式手続といいます)、それによって裁判所が下す判決のことを略式命令といいます。
この略式命令は、検察官が請求を行った日から14日以内に発せられます。
略式命令には、「罪となるべき事実」「適用した法令」「科すべき刑および付随の処分」「略式命令の告知があった日から14日以内に正式な裁判の請求ができること」が示されています。
略式手続に応じた時点で、被疑者が有罪になる可能性は非常に高くなります。
略式手続では、当事者が意見を述べたり弁護側が証拠を提出する機会はなく、裁判官は検察官が提出した証拠のみで審理するため、被疑者が罪を認めている状態でしか適用されないからです。
検察の証拠が不十分だと認めるようなときには無罪になることもありますが、基本的に無罪や減刑を主張するのであれば、略式起訴に同意せず、通常の公判手続を経る必要があります。
また、略式命令の内容に異議を申し立てることもできますが、通常の裁判を請求することになるため、かなりの時間がかかることに気をつけておかなければなりません。
そして、略式起訴で海外旅行に行けなくなるかどうかとのことですが、パスポートの発行に問題はありません。
パスポートの発行については旅券法第13条1項に、制限される条件が定められていますが略式起訴は該当しないためです。 ただし、略式起訴での罰金刑とはいえ前科はつくので気をつけておきましょう。
したがって、略式命令の経験があれば、一部の国では入国審査が厳しくなります。
渡航先がアメリカやオーストラリア、カナダ以外の国は入国審査の範囲外ですが、事前に渡航先がどうなっているかを調べておくことが大切です。
以上、略式起訴について解説しました。
もしもまだ疑問が残るようでしたら、適切な相談機関にお問い合わせください。