上司に飲酒を強要され、体調を崩しました。上司は何らかの罪に問われたりしないのでしょうか?

上司は僕がお酒が弱いことは既に知っていたのですが、断ったのにもかかわらず、飲酒を強要されました。仕方なく無理して飲んだ結果、その日帰宅後と翌日、起き上がれないほど体調を崩しました。


飲酒を強要する事自体が即、罰則の対象になるわけではありませんが、状況次第では犯罪行為として罪に問える場合もあります。飲酒の強要がどのような犯罪になりうるのか、簡単にご紹介します。

上司に飲酒を強要されたことによって体調を崩したとのご質問ですが、現在の日本には飲酒を強要するアルハラ自体を禁止する法律は存在していません。

そもそもアルハラとは、アルコール・ハラスメントの略称で、アルコールに関する嫌がらせを意味します。
アルハラが法律で禁止されていない以上、アルハラそのもので飲酒を強要してきた上司を罪に問うことは現状では難しいですが、状況によっては「強要罪」という犯罪行為に該当するかもしれません。


強要罪とは、刑法第223条に定められている犯罪です。
刑法第233条1項には、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する」と定められています。
したがって、条件に当てはまるようなら上司は強要罪に問われるでしょう。


また、上司が飲酒を強要することによって、あなたが体調を崩したり急性アルコール中毒などになったりしたケースでは、「過失傷害罪」になる可能性もあります。

過失傷害罪について定めている条文は、刑法第209条です。
刑法第209条1項には、「過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する」と定められています。


ただし、刑法第209条2項には、「前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」ことも定められているので注意しなければなりません。
いわゆる親告罪、というものです。


さらに、今回のケースからは外れるかもしれませんが、上司が飲酒を強要した結果として、強要された相手が飲酒が原因で死亡したのであれば、「傷害致死罪」になる可能性もあります。
傷害致死罪についての条文は、刑法第205条です。刑法第205条には、「身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する」ことが定められています。


傷害致死罪は、殺人罪や過失傷害罪と混同されやすいですが、別の罪です。相手の死亡という結果に対して故意がないので、殺人罪にはなりません。
一方で、予測し得ない完全な不慮の事故、というわけでもなく相手への行為自体に関しては故意があるので、過失致死とは異なるのです。


以上、ここまでいくつかの罪を見てきましたが、仮に飲酒を強要した上司に刑罰が与えられないとしても、民法上の不法行為として慰謝料などを請求できる可能性があります
ですので、まずは専門機関に相談した上で適切に行動を進めていくことが大切です。また、刑罰の対象になりそうな場合も、早めに専門機関に相談をしながら対応をしていきましょう。


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