相手の有責で離婚したのですが、慰謝料の支払いが滞っています。どうにかできませんか?

3年ほど前に、夫の不倫がもとで離婚することになりました。慰謝料の支払い金額も決まっていたのですが、一括で支払えないため分割してほしいという相手の申し出を受け入れたところ、最初の数回以降支払いが滞っています。
なんとか支払わせる方法はないでしょうか。


支払いの督促には、5つの方法が考えられます。
また、慰謝料の支払いの際に定めていた場合、遅延損害金を請求することもできるでしょう。

相手の有責で離婚したのにもかかわらず慰謝料の支払いが滞っている場合、督促を行って回収することができる可能性があります。
督促とは、義務を果たすように催促することです。
督促の方法としては、「内容証明郵便」「履行勧告」「履行命令」「強制執行」「支払督促」の5つが考えられます。

まず、内容証明郵便という方法は、発送日や送り主、送り先、郵便の内容を郵便局が証明する郵便方法です。
内容に法的効力をもたせられるわけではありませんが、相手に精神的なプレッシャーを与えることができるでしょう。内容証明郵便はご自身でも出すことが可能なため、まずは簡単にできる方法で督促をしたい場合に有効です。

裁判所を通して法的な督促を行いたい場合は、「履行勧告」「履行命令」「強制執行」を行うことができます。
法的に離婚慰謝料を決めたのに支払われないなら、これらの方法を行うことを検討するべきです。

履行勧告とは、家庭裁判所調査官が離婚慰謝料の支払いについて調査を行い、元配偶者に対して督促をする方法となります。家事事件手続法第289条で定められている方法です。
無料で行うことができますが、法的な強制力があるわけではない点に注意しなければなりません。

もしも履行勧告でも離婚慰謝料の支払いがなされないようなら、家事事件手続法第290条で定められている履行命令を行うことができます。
履行命令は、裁判所が離婚慰謝料について具体的な支払期限を定めるものです。履行命令に背くなら、10万円以下のペナルティが課されることになるので履行勧告よりも支払われやすいと言えます。

これまでの方法で離婚慰謝料が支払われないなら、民事執行法で定められている強制執行を行うことが可能です。

強制執行とは、元配偶者の財産を差し押さえて強制的に離婚慰謝料を支払わせる方法です。強制的に支払わせる手段なので、判決書や調停調書などの公的な文書が必要となります。
強制執行で慰謝料を差し押さえる場合、給与手取りの3/4が33万円を超える場合は33万円を超えた部分、それ以外の場合は給与手取り額の1/4を差し押さえることが可能です。

強制執行を行う際には注意点があり、自ら元配偶者の財産を特定しなければなりません。裁判所が財産を調査して差し押さえてくれるわけではないので気をつけてください。
相手に財産がなければ強制執行が無駄になってしまうので、給与や預金があるかどうかを調べましょう。
強制執行をしたいなら、元配偶者の住所地を管轄している地方裁判所に申し立てることで可能です。

ちなみに、裁判や調停をしていなくても夫婦間で離婚慰謝料について話し合って決めたのであれば、支払督促を行えます。支払督促とは、裁判所から督促状を出してもらう方法です。
ただし、支払督促は元配偶者に異議を申し立てられるおそれもあり、そうなると通常の裁判を行うことになります。

また、離婚慰謝料について遅延損害金を定めているなら、その金額も受け取ることが可能です。現在は民法第404条で遅延損害金については年5%と定められていますが、2020年4月1日の民法改正では年3%となる点にも注意しておきましょう。
今回は、離婚慰謝料を支払ってもらう方法をお答えしました。

しかし、具体的にどのような状況なのか、ご質問から測りかねるところがありますので、強制執行などの督促手段をお望みであるのならば、まずは適切な機関にご相談下さい。


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