3年前に夫が失踪して、居場所はもちろん、生きているのかどうかもわかりません。
この3年間は自分のパートの給料と貯金でやりくりしてきましたが、徐々に生活費が苦しくなってきているので、可能であれば夫の口座にある預金を使いたいのですが。
夫がその収入をもって生活費の多くをまかなっていた場合は、夫が失踪すると生活に困窮することになります。
生活のためにも、夫の口座の状況確認をしたり、お金を下ろしたりしたいと思うことでしょう。 配偶者が失踪した夫に代わって口座状況を確認したり、お金を下ろしたりすることは可能なのでしょうか。
夫の口座の管理者は、あくまで夫です。
銀行口座の状況を教えることは、個人情報漏洩の観点からも望ましくありません。
そのため、「銀行などの金融機関から失踪人の口座の状況について教えてもらうことはかなり難しい」が結論です。
失踪者のローンの状況や取引先などの情報についても同じになります。
配偶者という明確な立場があっても、口座状況を教えてもらうことは難しいのです。
口座の名義人である夫本人の承諾なく夫の銀行口座から勝手にお金を引き出すことも、原則的に「できない」が結論になります。
夫名義の通帳をATMなどで記帳することは問題ありません。
夫名義の口座の通帳が残っている状況であれば、記帳によって口座状況を確認することは可能です。
ただ、ネット銀行などは通帳を発行しないため、記帳による状況把握ができません。 また、記帳による状況確認は、あくまで記帳される内容だけです。
配偶者が失踪した夫の口座の預金を引き出す方法としては「失踪宣告」があります。
失踪宣告とは、失踪した人を「法律上死亡した」ことにして、財産整理などを進める手続きです。
法律上死亡したわけですから、相続が開始します。
配偶者は相続人として相続財産(預金など)を受け取ることができるのです。
失踪宣告の手続きは裁判所で行います。
失踪宣告には条件が定められているため、夫の失踪が条件に合致しているか確認することが必要です。
失踪宣告には「普通失踪」と「特別失踪(危難失踪)」があります。
普通失踪と特別失踪で条件が違っているため、注意が必要です。
普通失踪は「生死が7年明らかでない」ことが条件になります。
特別失踪は「危難(戦争や災害、船舶の沈没事故など)が去ったときから1年生死が明らかではない」ことが条件です。
普通失踪が認められると、生死不明から7年の満了で死亡したとみなされます。
特別失踪では、災害などの危難で生死不明の状態になり、その危難が去って1年経っても生死が不明の場合に死亡したとみなされるのです。
普通失踪や特別失踪の手続きを経ることによって、口座の預金を相続というかたちで引き出すことができます。
失踪宣告の手続きや進め方については、相続が始まるであろうことも鑑みて、弁護士に相談するとよいでしょう。
急いでお金を引き出す必要があるときは、弁護士に事情を説明しておきましょう。