先日、高校生の息子が同級生の男子生徒と喧嘩になって、その際に殺人をほのめかすような発言をしたそうです。後日相手の親から連絡が来て脅迫罪で訴えると言われました。もちろん息子は本当に相手を殺すつもりなんてなかったのですが、脅迫罪になってしまうのでしょうか?
「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知」することによって成立するのが、刑法222条の脅迫罪です。
脅迫罪の成立においては、「どのような脅迫をすれば脅迫罪に該当するのか」「誰が対象になるのか」が問題になります。
脅迫罪の成立要件について見て行きましょう。
脅迫罪が成立するための「脅迫」とは、どのようなことを指すのでしょう。
脅迫罪が成立するための脅迫は、「害悪の告知」であることが必要です。
害悪の告知とは、「財産や身体、命などに関係する害をなす」という告知のことになります。
たとえば「怪我をさせてやる」「殺してやる」「無事に帰れると思うな」などが代表的な害悪の告知です。
告知の方法は、口頭であるか否かを問いません。
口頭・文面・態度などで告知をした時点で脅迫罪が成立します。
財産や生命などに関する事柄であっても、害悪の告知(危害を加えるという内容の告知)でなければ脅迫罪は成立しません。
また、害悪の告知にあたるか否かは客観的に判断されます。
第三者が見聞きしても一般的に恐怖を感じる内容であることが必要です。
害悪の告知をされた側が「脅迫だ」と主張しても、それはあくまで主観になります。
また、加害者(脅迫した者)の関与によって引き起こされると感じられるものである必要もあるのです。
脅迫にあたるかは、ケースバイケースで判断されます。
たとえば、幼稚園の子供が「殴ってやるぞ」と害悪を告知した場合と、歴戦のプロボクサーが「殴ってやる」と害悪の告知をした場合、どちらがより恐ろしいでしょう。
おそらく、ほとんどの人はプロボクサーに害悪の告知をされた方が恐ろしいはずです。
幼稚園の子供の害悪の告知は、冗談や悪戯の類だと受け止めるかもしれません。
同じ害悪の告知でも、ケースごとに客観的に見て判断するのです。
脅迫罪の対象になる人物は、脅迫を受けた本人または本人の親族に限られます。
たとえば、「友人を殴ってやる」という告知があったとしましょう。
害悪を告知しているので、脅迫罪が成立すると思うかもしれません。
しかし、脅迫罪は成立しません。友人は、本人または本人の親族ではないからです。 恋人についても同じになります。
法人については、基本的に脅迫罪の対象外です。
ただし、法人の代表者や役員などの個人の身体や生命、財産などを害する旨のものだと判断できる場合は、法人に対しての脅迫についても脅迫罪が成立する可能性があります。