申請しているものとは別の経路を通っている場合、会社側からは通勤災害の対象外であると言われるケースがあります。
今回ご相談のケースがどのようなものかによりますが、まずは通勤災害がどのようなものかを確認してみましょう。
通勤災害とは
厚生労働省東京労働局によりますと、通勤災害とは、「労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡」を指します。
そのため、通勤災害として認められるためには、まず「通勤中」であったことが証明されなければならないのです。
労働者災害補償保険法第7条第2項には、「通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。」という記載があります。
そして、続く各号で移動の類型として、「住居と就業の場所との間の往復」、「就業の場所から他の就業の場所への移動」、住居と就業場所との間の「往復に先行し、又は後続する住居間の移動」が挙げられています。
これらの規定から、通勤中であったと認められるためには、まず、その移動が業務に就くため、もしくは、業務を終えたことによるものでなければなりません。
例えば、仮に会社に向かっていた場合でも、併設する福利厚生施設の利用や労働組合の活動参加等が目的であれば、通勤災害は認められないのです。
通勤災害の移動に関する規定
今回のケースは、申請している経路とは別の場所での事故ということで、その経路をとった理由や目的が、労働者災害補償保険法第7条第2項の「合理的な経路」に該当するかどうかが問題となってくるでしょう。
東京労働局のホームページでは、一般的に労働者が通勤のために通常利用する経路であれば、それがたとえ複数あったとしても、すべて「合理的な経路」として認められると明記されています。
そのため、今回のように申請外のルートであっても、常識の範囲内であれば、通勤災害と認められる可能性があるでしょう。
ただし、特段の理由もないのに、著しく遠回りになる経路であった場合は、「合理的な経路」とは考えられません。
さらに、労働者災害補償保険法第7条第3項には、労働者が通勤中に移動の経路を逸脱したり、移動を中断したりした場合は、もはや「通勤」とは認められないという規定があります。
例えば、会社からの帰り道に、映画を見に行ったり、友達と食事に出かけたりすると、その時点で「通勤の中断」や「逸脱」と見なされ、その後に起こった事故について通勤災害は認定されなくなるのです。
ただし、通勤途中で、「日常生活上必要な行為」のために、逸脱・中断した場合は、通勤経路に復帰した時点から、通勤災害の対象となります。
ここでいう「日常生活上必要な行為」については、厚生労働省令により細かく規定されていますので、ご確認ください。
- 日用品の購入や、これに準ずる行為
- 職業訓練や学校教育、その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
- 選挙権の行使や、これに準ずる行為
- 病院や診療所において、診察または治療を受ける行為や、これに準ずる行為
- 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに孫、祖父母および兄弟姉妹の介護(継続的に、また反復して行なわれるものに限る)
⑤について、以前は孫、祖父母および兄弟姉妹の介護に関しては、同居や扶養を要件としていましたが、平成29年1月1日より同居、扶養していない場合についても対象とするよう変更となりました。
このように、たとえ申請外のルートであっても、通勤災害が認められ、労災の補償の範囲となるケースが考えられます。
労災が使用できる可能性がある場合は、適切な機関に相談されてみてはいかがでしょうか。