詳しくは伏せさせていただきますが、夫がある犯罪で逮捕されたと連絡が入りました。本当に夫がやってしまったのであれば社会的にも心情的にも許しがたい犯罪です。
これを理由に離婚することはできるのでしょうか。
日本の法律には、夫が逮捕されたことだけを理由に離婚ができるという規定はありません。
したがって、この場合も通常の離婚と同様に、夫の合意が取れるかどうかによって対応が大きく変わります。
夫の合意の有無に分けて、順に考えていきましょう。
逮捕された夫の合意が得られた場合、比較的簡単に離婚することが可能です。
離婚届を差し入れ、そこに必要事項を記入してもらった後、宅下げ(差し入れの逆)で離婚届を受け取ります。
そして、双方のサインがそろった離婚届を市区町村役場に提出することで、民法第763条による「協議上の離婚」を成立させることができるのです。
一方、夫の合意がない場合は、協議上の離婚を行なうことは困難になってきます。
というのも、逮捕・勾留されている時点では、通常、夫との面会は短時間に限られ、離婚についてゆっくりと話し合うような機会を持つことができないからです。
面会時間に制限が設けられていない弁護士を通して説得する方法もありますが、それでも夫から離婚の合意が得られない場合は、離婚調停や離婚裁判を行なうことになります。
ただ、現実的には、逮捕・勾留中の夫は、離婚調停に出席することができない可能性が高いため、調停は不調に終わり長期化するケースが多いでしょう。
一般的に、相手の合意がなくても離婚できるかどうかは、民法第770条第1項に記載されている離婚事由に該当するかによって判断されます。
民法第770条第1項の各号には、
という5つの項目が列挙されています。
例えば、夫が強姦、買春など肉体関係を持つに至る性犯罪を行なった場合は、第1号の「不貞行為」
にあてはまる可能性があります。
また、DVにあたる暴行などのように、犯罪の対象者が妻自身や子どもであった場合にも離婚が認められる可能性があるでしょう。
いずれにしても、最終的には裁判所の判断を待つこととなります。
日本の法律では、逮捕、勾留中であっても、被疑者である夫には「無罪の推定」が適用されます。
世間の印象では「逮捕=有罪」ですが、法律上は刑事訴訟法第336条などの規定により、犯罪の証明がないかぎりは「無罪」と考えられるのです。
そのため、夫の合意がない場合は、逮捕だけを理由に即離婚が成立するということは難しく、長期化する可能性が高いといえるでしょう。