普段良く面倒を見てくれるヘルパーさんに遺産を残したいのですが、可能でしょうか?

現在一人住まいをしているのですが、寄る年波には勝てず、ヘルパーさんのお世話になっています。
とても親身になって面倒を見てくれるため、いくらかでも財産を残したく考えていますが、可能なのでしょうか。


第三者に財産を譲り渡すための、「遺贈」という制度を使用することで、ヘルパーさんに財産を残すことが可能です。
ただし、制度を使う上で注意しなくてはいけないことがあります。

今回のケースは、普段から面倒を見てくれているヘルパーさんに遺産を残したいとのことなので、第三者に財産を譲り渡すための「遺贈」という制度を活用することが考えられます。
これは、民法第964条によって、「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」ことが定められているためです。遺贈とは、遺言によって財産を贈与することを意味します。

引用:e-Gov法令検索 -民法第964条

民法第964条は、遺言によって誰に財産を贈与したいのかを残しておくことで、遺贈が成立することを定めている条文です。
また、民法第896条によって、遺言が有効であれば、原則として遺贈を行う義務は相続人が負うことと定めています。

引用:e-Gov法令検索 -民法第896条

ただし、遺言は法的に決められた書式があるため注意しなければなりません。遺言について決まった書式に従わなかった場合には、遺言は無効となってしまう可能性があります。
遺言の形式は、状況によってさまざまです。

たとえば、遺言者の名前や遺贈を受ける人の名前、遺贈する財産、遺贈の執行者などの多くの項目を適切に書くことが必要となります。
したがって、弁護士や司法書士、行政書士といった専門家に遺言の作成を依頼することが一般的です。


ちなみに、遺贈は受け取る人の同意がなくても行うことができます。
したがって、ヘルパーさんが遺贈について同意していない場合でも、遺贈をすることは可能です。
ただし遺贈は法定相続人や遺贈を受けさせたい人ときちんと話をしておかなければ、実行する際にはトラブルになりかねません。
法定相続人とは、民法第887条によって定められた相続人のことです。状況によりますが、配偶者や血族があたります。


法定相続人には、相続する財産に対して必ず受け取ることのできる遺留分という取り分があることに注意が必要です。遺言でヘルパーさんに財産を渡そうと思っても、この遺留分までは侵害できません。
遺留分については、民法第1042条に定められています。


たとえば民法第1042条第1項には、「直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1」が遺留分となることが定められているのです。

直系尊属とは、父母や祖父母などを指します。これら直系尊属だけが法定相続人なのであれば、3分の1は遺留分となるのでヘルパーさんには3分の2までしか渡せません

引用:e-Gov法令検索 -民法第1042条

ここまでご説明したように、普段から面倒を見てくれているヘルパーさんに遺産を残すことは可能ですが、注意するべき点が複数あります。正しい手続きを行うためにも、適切な機関にご相談ください。



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