がんが見つかりましたが、直前の検査ではなにもないという結果でした。医療過誤として訴えることはできますか?

先日の検査で胃がんが見つかり、現在治療に入っています。しかし、がんの告知を受ける一つ前の検診では、なにもないという結果でした。そう時期も離れておらず、見落としを疑っています。この検査のときにがんが見つかっていれば、もっと早期に治療に入れたのではないでしょうか。このような場合、訴訟で損害賠償を請求することはできますか?


訴え出ることは可能ですが、医療過誤と認められるかは病態、検査の状況などにより様々です。

まず結論から申し上げると、損害賠償を求めて訴訟を起こすことそのものは可能です。
その上で勝訴を目指す場合、必要な証拠を揃え、その証拠を元に相手方の責任を追求する訴状を作成する必要があります。

少なくとも、次のような手順が求められます。

  • 見落としと思われる検査時のカルテ、検査結果、画像、映像(MRI、CT、レントゲン、胃カメラ・消化器内視鏡映像 他)などの資料取得
  • 証拠の精査
  • 取得した資料、証拠を元に訴状を作成
  • 提訴

ただ訴え出るだけでは、お望みの結果を得ることは難しいでしょう。

証拠として取り寄せたカルテ等の確認を行い、
「行った検査が適切だったか」、「検査時に見落としがなかったか」、「診断を行った専門医と、説明にあたった主治医で連絡ミスがなかったか」
など、様々な角度から分析を行い、訴状を作成する必要があります。

基本的に院内で使用するカルテの情報や検査結果などは、医療従事者が理解できればいいように書かれています。
そのため、せっかく情報の取り寄せを行っても、患者が自力で得られる情報は少ないでしょう。
相手方以外の医師に情報の精査を依頼する、「検査時に病変を見つけて然るべきだった」という意見書を書いてもらうなど、専門家の力を借りる必要が出てきます。

しかし、医師に意見書を書いてもらうようなことは、つてがないと困難です。

また、裁判では、意見書を書いた医師の経歴等も無視できない影響をもたらしますが、裁判沙汰に記名の意見書を作ってくれる医師はそう多くありません。

そこでおすすめするのは、医療過誤訴訟の経験が多い弁護士に依頼をすることです。
費用はかかりますが、上で挙げた対応をほとんど弁護士が行ってくれます。

また、そのような弁護士は意見書を作成してくれる医師につてがあることが多く、より裁判の場で有利になるよう、協力体制を敷いてくれます。

そして、医療過誤訴訟の経験が豊富な弁護士に依頼することで得られるもう一つの大きな利点は、「だめなときにははっきりそう教えてくれること」です。

医療の専門家ではない裁判官のもとに医療にまつわる争いを持ち込むことになる訳ですから、医療過誤訴訟ははっきりとした決着がなかなかつかず泥沼になることも少なくありません。
そうなると、裁判自体が長期化することになります。

弁護士を通して医師に調査を依頼した結果、勝ち目がないと判断された時点で、弁護士は依頼者にはっきりとそう伝えてくれますから、無益な裁判で長い時間頭を悩ませる必要がなくなります。

一方、医師につてもなく、経験も浅い弁護士に依頼をしてしまうと、そのような判断もつかずいたずらに長引く裁判を行うことにもなりかねません。
勝てる要素の多い裁判であっても、知識がない場合はその要素自体を見落としてしまいます。

他の訴訟でももちろんですが、医療過誤訴訟では特に、弁護士選びは慎重に行うべき、ということができるでしょう。

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