2019年の4月1日から改正労働基準法が施行され、従来は規定のなかった「有給休暇を労働者(従業員)に取得させること」が使用者(企業)の義務になりました。これは政府が進める「働き方改革関連法案」の一環です。
改正労働基準法のポイント
- 年間10日以上の有給休暇がある労働者を雇用する、すべての企業が対象
- 企業規模による例外はなく、中小企業にも一律に適用される
- 条件を満たす労働者には、年間最低でも5日以上の有給休暇を取らせなければならない
- 有給休暇のタイミングは労働者から指定する
- 違反した使用者には罰則がある
要点は上記の通りです。
日本人は世界中から勤勉な国民だと認知される一方、時間あたりの労働生産性は低く、有給休暇の取得率も世界最低レベルというデータが出ています。今回の法改正は、そうした状況への対応策の1つと言えるでしょう。
使用者が注意しなければならない点は多く、法改正が適用される範囲も広くなっています。たとえば誤解されがちですが、正社員だけに有給休暇を取らせれば良いというわけではありません。
「年間10日以上の有給休暇がある労働者」の条件を満たしていれば、パートタイムや契約社員であっても対象となります。
また、使用者は有給休暇を取る労働者に対して、減給など不利益が生じる扱いをすることも禁じられています。
もし労働者に所定の有給休暇を与えなかった場合、労働基準法39条違反として30万円以下の罰金(罰則規定は労働基準法120条)が課せられます。
使用者が有給休暇取得のタイミングを決めることもできますが、それを就業規則に記載せず勝手にやってしまうと労働基準法89条に違反して同額の罰金となります。
しかも「30万円」は対象になった労働者1人あたりの金額なので、多くの労働者に対して違反を行った使用者は、累積した罰金額が非常に高額となるおそれもあります。
こうして内容を見ていくと、使用者の義務が増えただけのように感じられるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
十分な休養により労働者の意欲が高まって生産効率が向上し、離職率を低く抑えられるメリットも見込めるからです。
なお、今回の法改正は使用者への義務を課したものですので、労働者に新しく生じる法的義務はありません。労働者が自分の判断で有給休暇を取得しなかった場合でも、法律違反に問われるのは使用者になります。
労働者は使用者側が新たなルールを守らない、またはルール適用外になるよう一方的な雇用契約変更をした場合などに備えて、目を光らせておくと良いでしょう。
これは義務というより注意点です。もし違反が認められるなら、証拠を揃えて労働基準監督署に相談することで改善される見込みがあります。
本稿では改正労働基準法の概要をかいつまんで説明しましたが、より詳細については、
厚生労働省オフィシャルサイトで配布されているPDFファイルに記載があります。長文ですが必要な情報がほぼ網羅されており、参考になるはずです。